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国立環境研究所地球環境研究センター 前の記事目次次の記事 2013年2月号 [Vol.23 No.11] 通巻第267号 201302_267003 気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)および京都議定書第8回締約国会合(CMP8)報告 「低炭素アジア実現に向けて:科学と政策を橋渡しするモデルの役割」〜COP18サイドイベントの開催〜 社会環境システム研究センター 持続可能社会システム研究室 特別研究員 朝山由美子 社会環境システム研究センター 持続可能社会システム研究室 准特別研究員 須田真依子 国立環境研究所は、マレーシア工科大学との共催で、COP18/CMP8において、「低炭素アジア実現に向けて:科学と政策を橋渡しするモデルの役割」と題するサイドイベントを開催しました。本サイドイベントでは、「低炭素アジアに向けた10の方策」と「マレーシア・イスカンダル開発地域の2025年に向けた低炭素社会ブループリント(実行計画)」を発表しました。「10の方策」と「低炭素社会ブループリント」は、これまで国立環境研究所が、京都大学、マレーシア工科大学などと開発してきた低炭素社会実現に向けたシナリオとロードマップの構築手法に基づいて作成したものです。シナリオの定量化にはアジア太平洋統合評価モデル(Asia-Pacific Integrated Model: AIM)を使っています。パネルディスカッションでは、国際的に活躍している研究者や行政実施機関の政策担当者を交えて、低炭素アジア実現に向けた科学と政策を橋渡しするモデルの役割について議論しました。以下にその概要を紹介します。 1. アジア全体、および、マレーシア・イスカンダル開発地域の低炭素アクションプランの策定 アジア、そして世界全体が低炭素社会への転換を実現するためには、政府、産業界、市民、国際社会など各主体が、長期的な視点から目指す社会の姿をしっかりと見据えつつ、それぞれの役割を強く認識しながら協力して取り組むことが必要不可欠です。 「低炭素アジアに向けた10の方策」は、環境省環境研究総合推進費S-6「アジア低炭素社会研究プロジェクト」に携わる研究者が上記の観点を踏まえ、アジアが低炭素社会に向かうために何をすべきか、その実施ステップを取りまとめたものです。この研究成果をたたき台としつつ、アジア各国で各主体の議論が活性化し、地域の特性を踏まえた独自の方策を構築する機会となればという期待を込めて、本サイドイベントの機会を通じ、プロジェクトリーダーである国立環境研究所社会環境システム研究センター甲斐沼美紀子フェローが「低炭素アジアに向けた10の方策」の概要[1]を紹介しました。 「低炭素アジアに向けた10の方策」を紹介する甲斐沼フェロー 一方、マレーシア・イスカンダル開発地域では、「アジア地域の低炭素社会シナリオの開発」研究プロジェクトを行っており、成果の一環として、「マレーシア・イスカンダル開発地域における2025年に向けた低炭素社会ブループリント(以下、LCS BP)」政策担当者向け要約(Summary for Policymakers: SPM)[2]を2012年11月に策定しました。本サイドイベントには、LCS BPの策定に協力したマレーシア工科大学から、Mohd. Azraai Kassim副学長が開会挨拶を行い、経済成長と温室効果ガス排出量増加のデカップリングを目的としたLCS BPの実行がマレーシアの低炭素社会実現を促進し得ることを述べました。また、LCS BPの発行主体となるイスカンダル地域開発庁のIsmail Ibrahim長官が基調講演で、イスカンダル開発地域は、持続可能な経済成長を実現するため適切な資源管理と多様なステークホルダーによる成長を促進し、LCS BPの実行を通して、世界の低炭素社会実現に貢献していくことを強調しました。 2. 科学と政策を橋渡しするモデルの役割:計画からその実装へ 「低炭素アジア実現に向けた科学と政策を橋渡しするモデルの役割」に関するパネルディスカッションでは、各パネリストは、低炭素アジア実現に向け、科学的知見をどのように関連する政策策定や、事業の実施に活用しているかを紹介すると共に、政策や具体的取り組みに活かすためにはどのような知見やアプローチが必要になるかを議論しました。 低炭素アジア実現に向けた科学と政策を橋渡しするモデルの役割をテーマにしたパネルディスカッション 国際協力機構(JICA)の稲田恭輔氏からは、世界全体が低炭素成長を達成させるには、科学的知見に基づいた投資を行っていくことが不可欠であり、その実現のためにJICAが取り組んでいる案件が紹介されました。 環境省谷津龍太郎地球環境審議官は、AIMを用いたエネルギー選択シミュレーションの研究結果が、八つのグループ、100人以上の専門家が集まった「エネルギー・環境会議」における議論の共通知見となり、「革新的エネルギー環境戦略」の閣議決定に貢献したことを報告しました[3]。 インド経営大学院のP.R. Shukla教授は、インドの国家目標と世界の温室効果ガス(GHG)削減目標を含む、多様な目的と一貫した技術オプションの最適ポートフォリオを検討する際にAIMを活用し、国・自治体レベルの低炭素社会シナリオの策定・評価に加え、セクター別の低炭素社会シナリオと、その実現可能なロードマップを策定していることを報告しました。Shukla教授は、どのようにGHG排出量を削減しながら経済成長を維持していくかといった低炭素開発戦略やそのロードマップ策定について発表しました。炭素の社会的費用や、GHG排出量を削減することによる副次的効果など、温暖化対策を多角度から分析し、外部費用の社会的受容可能評価やリスクについても検討していくことが不可欠であることを強調しました。 中国・能源研究所のJiang Kejun教授は、中国では、今やさまざまな低炭素技術の開発が進み、低炭素技術に対する投資額も毎年6000億ドルほど増えていること、低炭素社会を実現させるための政策プロセスや、低炭素技術を普及させるための市民に対する意識啓発も今や急ピッチで進められていることを話しました。気候変動対策というよりは国内のエネルギー問題や環境問題に対応するための対策ではあるが、地域レベルで低炭素社会への移行を推進する取り組みが急速に広がりつつあることはとても良い兆しであり、中国が低炭素社会に形成の先頭にたっていくことを信じると強調しました。 マレーシア工科大学で「アジア地域の低炭素社会シナリオの開発」のマレーシア側の研究プロジェクトリーダーを務めるHo Chin Siong教授はまず、LCS BPで示された方策12例を具体的に紹介しました。イスカンダル開発地域では、交通、エネルギーシステム、再生可能エネルギー、ライフスタイルの分野がGHG削減に対して最も高いポテンシャルをもっています。LCS BP作成の経験から、科学と政策の橋渡しには、実行計画づくりを研究者と政策担当者の協力によって行うこと、基礎研究・適切な合意形成が低炭素なフレームワークづくりを後押しすること、低炭素社会へのマインドセットが重要であることを強調しました。 中央省庁や政府機関を集積したプトラジャヤ地区からは、Putrajaya CorporationのOmairi Hashim氏がパネリストとして参加し、2025年に向けた低炭素グリーンシティー実現を目指し、京都大学とマレーシア工科大学の協力により四つのロードマップとアクションプランおよびプログラムを策定し、2&#8451;目標の達成をサポートしていることを報告しました。 このLCS BPについて、研究者と政策決定者の両視点から、目指す低炭素社会像と科学的知見が述べられた上で、低炭素社会シナリオ研究の政策への実装プロセスを報告したことは、大きな意義があります。会場からも資金やモニタリング等について質問があり、低炭素社会の構築の前進と必要な支援に関する議論を深めました[4]。 3. おわりに COP18/CMP8においては、各国の利害が衝突し、排出削減目標の設定にかかる交渉の進展は限られましたが、本サイドイベントでは、多様な主体が、経済発展を遂げながらも、低炭素排出・低資源消費社会への移行を目指し、科学的知見をもとに、具体的な戦略や投資計画が短期・中長期的に検討され、その実現に向けた行動に取りかかっている事例が共有されました。 特に、イスカンダル開発地域におけるLCS BP SPMに関する取り組みは、マレーシアのNajib Razak首相[5]や、同政府天然資源環境省Douglas Uggah Embas大臣[6]も非常に高い関心を寄せ、その実現に向けたさらなる進展を期待すると発表されました。 COP18/CMP8において標記のサイドイベントを開催したことにより、気候変動問題に携わる世界各国の多様な方々から私たちの研究活動に対するコメントを頂く機会に恵まれ、大変貴重な知見を得ることができました。私たちは、今後もイスカンダル開発地域、さらにはアジア全体の低炭素社会の実現に向け、多様な主体の役割を活かしながら低炭素社会実現のためのオプションを立案・実施・評価していくための研究分析力を高めていく次第です。 UNFCCC プレスコンフェレンス「マレーシア・イスカンダル開発地域における2025年に向けた低炭素社会ブループリント」 Climate Changeスタジオ「アジアを越える低炭素開発のためのベストプラクティス」 脚注 「低炭素アジアに向けた10の方策」の概要については、芦名秀一「アジア低炭素社会に向けた道しるべ&#8212;低炭素アジアに向けた10の方策 シンポジウム『アジア低炭素発展への道』開催報告」を参照。また、「低炭素アジア10の方策」全文については、&#8203;http://2050.nies.go.jp/file/ten_actions_j.pdf&#8203;(日本語)、および、&#8203;http://2050.nies.go.jp/file/ten_actions.pdf&#8203;(英語)を参照。 「マレーシア・イスカンダル開発地域における2025年に向けた低炭素社会ブループリント」政策担当者向け要約(SPM)&#8203;http://2050.nies.go.jp/cop/cop18/SPM_LCS%20Blueprint_Iskandar%20Malaysia.pdf 「革新的エネルギー環境戦略」にかかる国立環境研究所の取り組みについては、藤野純一「エネルギーの選択肢づくりに関する私見&#8212;中央環境審議会地球環境部会2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会の議論に参加して&#8212;」地球環境研究センターニュース2012年7月号を参照。 サイドイベントプログラム、発表スライド、議事録、メディア掲載はウェブサイトで公開中。&#8203;http://2050.nies.go.jp/cop/cop18/ 12月11日、Najib Razakマレーシア首相が第13回IRDA幹部会合において、イスカンダルLCSブループリントの開始を承認し、「LCSブループリントは、2020年までに2005年比で二酸化炭素を40%削減するというマレーシアの取り組みに合致するもの」、「イスカンダルLCSブループリントが、マレーシアへの投資家の関心をさらに促すだろう」と発言したことが、大きく報道されました。 UNFCCC COP18/CMP8 国立環境研究所の取り組み紹介ウェブサイト「COP18/CMP8のNIESブースにマレーシア・天然資源環境省大臣が訪問」&#8203;http://www.nies.go.jp/event/kaigi/cop18/20121221.html 国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)報告 一覧ページへ 前の記事目次次の記事 目次:2013年2月号 [Vol.23 No.11] 通巻第267号 気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)および京都議定書第8回締約国会合(CMP8)報告 政府代表団メンバーからの報告 (1):第二約束期間スタート、将来枠組みに向けた作業の骨格も明らかに 気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)および京都議定書第8回締約国会合(CMP8)報告 政府代表団メンバーからの報告 (2):REDD+の交渉結果 気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)および京都議定書第8回締約国会合(CMP8)報告 「低炭素アジア実現に向けて:科学と政策を橋渡しするモデルの役割」〜COP18サイドイベントの開催〜 アジア低炭素社会に向けた道しるべ&#8212;低炭素アジアに向けた10の方策 シンポジウム『アジア低炭素発展への道』開催報告 気候変動適応社会へ、地域からの変革を目指して 〜気候変動適応シンポジウム報告〜 さまざまな分野の垣根を越えた研究者同士の交流を体験して 太陽からの放射エネルギーの観測と利用 &#8212;地球観測連携拠点(温暖化分野)平成24年度ワークショップ開催報告&#8212; 2012年度ブループラネット賞受賞者による記念講演会 [1] 気候変動の大胆な解決法 地球環境研究センタースパコン事務局だより&#8212;平成24年度成果報告会を開催しました&#8212; ご意見、ご感想をお待ちしています。メール、またはFAXでお送りください。 地球環境研究センター ニュース編集局 FAX: 029-858-2645 個人情報の取り扱いについては 国立環境研究所のプライバシーポリシー に従います。 地球環境研究センターニュースVol.23 [2012年度]2013年2月号 [Vol.23 No.11] 通巻第267号 RSS について新着情報メール配信サービス Copyright &#169; National Institute for Environmental Studies. 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